不動産物件の広告を見ていると、10%以上の高い利回り物件も多く見られます。ですがよくある失敗事例として、高い利回りに安心して購入したところ運用していくうちに多額の費用がかかってしまった、という話もよく聞きます。これは表面的な部分しか見ておらず、本当に収益性が高いのか判断を誤ったためです。広告の数字に振り回されず、本当の意味で利益率が高い物件選びを学んでみましょう。中古物件なので既に入居者がいるわけですが中には空いている部屋もあります。現在得られている賃料が現況賃料収入、満室時が満室時想定賃料収入です。満室時を想定して利回りを計算している場合が多いので広告の数字だけを見てすぐに判断することはやめましょう。今回は不動産投資の利回りの基礎知識から、目安や注意するポイントを解説します。
不動産投資の広告にある利回りはほとんどが表面利回り
広告に出てくる数字はほとんどの場合表面利回り(グロス)といって家賃収入を物件価格で割り算した数字です。4000万円の物件から毎年400万円の利益が得られるとすると表面利回りは10%ですので広告には利回り10%と記載されます。
注意点として不動産投資における利回りは想定利回り、表面利回り、実質利回りの3つにわけられます。
- 想定利回りとは、満室状態における利回りのことで『満室時想定賃料収入÷物件価格×100』
- 表面利回りは現在の不動産状況を反映している利回りのことで『現況賃料収入÷物件価格×100』
- 実質利回りは表面利回りに経費などを反映した利回りのことで『(現況賃料収入-経費)÷物件価格×100』
実際には管理費や税金、購入時には不動産取得税や登記費用もかかってくるため400万円すべてが手に入るわけではありません。つまり実質利回りで考える必要があるというわけです。
年間支出が100万円だった場合の計算例として、家賃収入(400万円)-修繕費や税金など年間支出(100万円)÷物件価格(4000万円)=7.5%となり、実質利回りは7.5%です。
不動産投資の経費例
不動産投資を始める際の主な年間支出を以下にまとめましたので参考にしていただければと思います。
- 管理費・修繕積立金(共有部分の管理・維持費用です)
- 不動産取得税(物件取得後半年~1年くらいで納税通知書が届きます)
- 登録免許税(登記手続きの際に国に納める税金です)
- 司法書士手数料
- 印紙税(売買契約書・請負契約書・領収書などに必要です)
- 不動産仲介会社への仲介手数料
- 物件の手数料
- 固定資産税(固定資産税評価額に標準税率1.4%をかけた金額です)
- 都市計画税(都市計画区域内の「市街化区域」と呼ばれる場所にある不動産の場合)
- 火災保険、地震保険(建物の中にある家具や什器などの”動産“を補償します)
- 修繕費、リフォーム費用(床の張替え、クロスの張替えやハウスクリーニングなど細かな修繕費です。収益から少しずつ積み立てておきましょう)
高い利回りの裏に隠された理由があることも
不動産ポータルサイトを見ていると、利回り13%という高い数字を誇る中古一棟アパートを発見。すぐに業者へ連絡をして購入しました。しかし、その数字は蓋を開けてみると、満室時の数値だったのです。実際には4割程度の空き室が発生していた物件を売買する直前に入居率を上げるため安い家賃で入居者を募集していたようで、その水準はその地域の水準で20%も低く、明らかに数値を水増しするだけのものでした。しかも大規模な物件であるにもかかわらず、外壁などの修繕費用で安く見積もっても最低500万円の出費がかかることもわかりました。その物件は既にギリギリの経営状態であるのに今後さらに空き室が発生したら、修繕費どころか家賃収入も危なくなってしまう物件だった・・・そんな事例もあります。
物件を選ぶ際には築年数が経過していて外壁や室内にリフォームが必要、賃貸需要が低いエリア、アクセスが悪い、周辺の環境が良くない、といったところに特に注意が必要です。また、借地権付き物件も避けた方が良いといえます。理由としては土地を借りている状態なので土地代として毎月支出が増えてしまうこと、契約更新時には更新料もかかることがあります。また、売却時に地主に承諾を得る必要があり名義変更料も必要になってしまいます。
さらに旧耐震基準(1981年5月31日までの建築確認において適用されていた基準)で建てられた物件にはローンが下りないのでこれも避けざるを得ません。利回りが高く安いからと購入してみても売却時に買い手が見つかりにくく、旧耐震基準というだけで入居者から敬遠されがちです。徒歩15分以上の駅から遠い物件、事故物件も同じく避けるべき物件です。家賃収入がなければ元も子もありませんので一般的に入居者が集まりにくい物件、エリアは避けるべきです。
人口減少で地方の賃貸需要が低下していることから特に不動産投資初心者の方は人口の多い都心で始めたほうがスムーズだといえます。また、立地が不利・築年数が古い・工場や学校からの入居者に依存している・事故物件の場合、空室リスクが高めになりやすいといえます。
関連記事:不動産投資で最も怖い空室リスク。空室がでやすい物件の対策と特徴は?
不動産投資の利回りの目安
それでは利回りの目安はいくらになるでしょうか?首都圏の木造一棟アパートで人気がある物件の平均利回りは『新築:5%~6%前後、中古:6%~8%』です。8%あれば十分高いほうといえます。しかし物件それぞれ物件の状況や周辺環境が異なる為、一概に「何%以上なら問題なし!」といえることはありません。利回りが低く見えても条件が良ければ経費節約ができ、利回りの向上につながることもあります。
高い利回りの注意点
また、現状で利回りが高くても避けた方がいい物件として、借地権物件(地主がいて毎月土地代がかかり、土地賃貸借契約更新時に更新料がかかる)、旧耐震基準で建てられた物件、管理費・修繕積立金が相場以上の物件、駅から遠すぎる物件、があります。これらは不動産投資の売却を考えた場合買い手が付きにくいのです。
ちなみに日本不動産研究所が公表した「第41回不動産投資家調査(2019年10月時点)」によると、都心部の賃貸住宅の利回りは以下のような結果になっています。
- ワンルーム:城南地区(目黒区、世田谷区):4.2%、城東地区(墨田区、江東区):4.5%
- ファミリー向け:城南地区(目黒区、世田谷区):4.3%、城東地区(墨田区、江東区):4.5%
参考:第41回「不動産投資家調査」(2019年10月現在)の調査結果
物件価格が高額になりやすい都心部では地方よりも低めになる場合が多いといえます。管理を管理会社に委託するなどの支出を見込んで平均よりも2%~3%程度高い物件を選んでおくとよいと考えられるので中古一棟アパートの場合6%~8%前後で選べると良いでしょう。
ポータルサイトに掲載されている物件は不動産仲介のプロが目を通して掲載しているものなので条件が良すぎる物件には逆に注意した方が良いと言えます。つまり「この条件にしないと売れない」ような、裏がある物件も中にはあります。
利回りに惑わされず、立地、築年数、事故物件ではないか、耐震性はどうか、入居者を1つの要件(工場や大学)に依存していないかなどを総合的に確認したうえで物件を選ぶとよいでしょう。また初心者の方が1人で総合的に情報を調べていくことは難しいので不動産投資のプロに相談して進めていけるとさらに安心です。不動産投資初心者の場合でも誠意ある業者なら面談時に詳しく説明をしてくれるはずです。
関連記事:【不動産投資の利回り】目安は何%?計算方法を徹底解説!
まとめ
- 広告の数字は家賃収入を物件価格で割り算した、表面利回り
- 「現況賃料収入」と「満室想定賃料収入」についてもチェック
- 高い利回りには理由がある
- 不動産投資の利回りの目安は6%前後から8%前後だが、立地・築年数・事故物件か否か・耐震性・入居者を1つの要件に依存していないかなどを総合的に判断することが大切
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