不動産を生前贈与する際に発生する税金とその節税について

不動産を所有している方が気になるのが税金対策ではないでしょうか。一般的に相続税は軽減の対策がされることがありますが、なかには生前贈与を選択する場合も見られています。

これから相続する可能性がある方は、生前贈与の基礎知識から注意事項までチェックしておきましょう。

生前贈与とは?

生前贈与とは親族間で相続税対策として利用されることが多く、個人から個人へ無償で財産を与えることにより、税金がかかります。

贈与税には暦年課税、相続時清算課税の2つの制度が設けられており、相続する人に納税義務が生じます。

暦年課税はその年の合計額が基礎控除の110万円を越えると贈与税がかかります。なお配偶者の場合は110万円とは別に、2,000万円の配偶者控除が利用できます。

相続時清算課税は一定の要件を満たす場合に適用され、相続時に税金を納める方法です。2,500万円までは税金がかからず、それ以上は20%の税金が発生します。

贈与税は相続税より高くなることが多いため、贈与税がかからない範囲内で行うのがポイントです。相続時清算課税は一見メリットが高そうに見えますが、結果的に相続した際に課税されるためほとんど節税対策にはなりません。

さらに3年以内に亡くなった場合は贈与ではなく、相続税の計算となるため効果がなくなってしまいます。

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生前贈与にかかる税金

贈与税、不動産取得税、登録免許税があります。

贈与税と相続税では異なる税率の為、どちらが有利か調べておく必要があります。

贈与税

一般贈与税率の場合

※兄弟間の贈与、夫婦間の贈与、親から子への贈与の場合。

基礎控除後の課税価格                

  • 200万円以下は税率10%、控除額はなし
  • 300万円以下は税率15%、控除額は10万円
  • 400万円以下は税率20%、控除額は25万円
  • 600万円以下は税率30%、控除額は65万円
  • 1,000万円以下は税率40%、控除額は125万円
  • 1,500万円以下は税率45%、控除額は175万円
  • 3,000万円以下は税率50%、控除額は250万円
  • 3,000万円超は税率55%、控除額は400万円

参考:国税庁 贈与税の計算と税率(暦年課税)

特例贈与財産用に該当する場合

※直系尊属(祖父母や父母など)から、その年の1月1日において20歳以上の者(子・孫など)祖父から成人した孫への贈与、親から成人した子への贈与などがこれにあたります。

  • 200万円以下は税率10%、控除額はなし
  • 400万円以下は税率15%、控除額は10万円
  • 600万円以下は税率20%、控除額は30万円
  • 1,000万円以下は税率30%、控除額は90万円
  • 1,500万円以下は税率40%、控除額は190万円
  • 3,000万円以下は税率45%、控除額は265万円
  • 4,500万円以下は税率50%、控除額は415万円
  • 4,500万円超は税率55%、控除額は640万円

参考:国税庁 贈与税の計算と税率(暦年課税)

相続税

法定相続分に応ずる取得金額

  • 1,000万円以下は税率10%、控除額はなし
  • 3,000万円以下は税率15%、控除額は50万円
  • 5,000万円以下は税率20%、控除額は200万円
  • 1億円以下は税率30%、控除額は700万円
  • 2億円以下は税率40%、控除額は1,700万円
  • 3億円以下は税率45%、控除額は2,700万円
  • 6億円以下は税率50%、控除額は4,200万円 6億円超は税率55%、控除額は7,200万円

参考:国税庁 相続税の税率

贈与税の課税方法は暦年課税、相続時精算課税の2つから選ぶことができます。

暦年課税は贈与者1人から受けた贈与の1年間の総額から、基礎控除110万円を差し引いた金額に対して課税されるもので、110万円以下であれば課税されません。また、両親や祖父母などの直系尊属からの場合は特例贈与財産が適用され、より税率が低く控除額が多くなります。

相続時精算課税は60歳以上の父母又は祖父母から、20歳以上の子又は孫に対し、財産を贈与した場合において選択できる贈与税の制度です。贈与者1人につき最大2,500万円の特別控除が適用され、その残額に対して一律に20%の贈与税を課されます。この場合贈与税を抑える効果がありますが特別控除を適用したぶんは相続時に相続税として清算されるので注意が必要です。

また、配偶者からの贈与の場合は婚姻期間が20年以上の婚姻関係かつ、居住用不動産又は居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合、基礎控除110万円のほかに最高2,000万円まで控除ができるという特例もあります。 こちらも相続時精算課税と同様に贈与税を抑える効果がありますが相続税の節税にはならない点に注意が必要です。

不動産取得税

不動産を取得した場合、有償・無償の別、登記の有無にかかわらず課税される税金です。

不動産取得税の税額は、「課税標準額×税率」で計算されます。課税標準額は原則として固定資産税評価額が適用され、これは時価よりも大抵低く土地の場合は時価の7割程度、建物の場合は5~6割程度です。

登録免許税

法務局にある登記簿に土地や建物の所有権を記録して公示するための手続きの際に納める税金です。

税率は登記の種類によって異なり、土地の所有権移転登記、中古住宅などの所有権移転登記は2.0%となっています。また、これに加え、手続きをしてくれる税理士への報酬も必要になります。

不動産の生前贈与の流れ

不動産贈与契約書の作成

贈与者と受贈者の双方の合意があれば口約束でも成立する贈与の契約ですが客観的に契約があったことを証明するために書類を作成するのが一般的です。

書類に決まった形式はありませんが、『いつ・だれに・何を・贈与する条件・贈与する方法』の5つをもれなく記載する必要があります。

また、現金や株式と違い不動産の場合は贈与契約書に収入印紙が必要になります。不動産の譲渡契約書は印紙税の課税対象なので200円の収入印紙を貼ります。

不動産の生前贈与には、登記や登録免許税などの費用がかかりますのでこれらをだれが負担するかについても明確に記載しておきましょう。贈与契約書を作成すると、民法550条により、取り消すことはできないことも覚えておいてください。

法務局で登記申請

贈与される不動産を管轄している法務局で名義変更をします。

以下の書類を用意する必要があり、司法書士などの専門家に依頼することも負担を減らすポイントです。

  • 対象不動産の登記識別情報通知(登記済権利書)
  • 贈与者の印鑑証明書(3ヶ月以内のもの)
  • 受贈者の住民票
  • 固定資産評価証明書
  • 不動産贈与契約書(登記原因証明情報)
  • 登記申請書

贈与税の申告

土地の価格が年間110万円を超える場合、納税者自身が税金の計算をして税務署に申請と納税を行う必要があります。

贈与税の税率は非常に高く、3000万円を超えると55%も課税されてしまう為、土地を生前贈与する際には贈与税がかからないようにうまく節税対策を行うことが必要となります。

生前贈与で節税する際の注意事項

生前贈与を節税として使うなら、暦年課税を選び贈与税がかからない1年当たり110万円ずつ贈与するのが最も抑えられます。

ですがそもそも贈与税が設けられているのは、相続税の課税回避の目的で生前に資産を移転させないためです。

贈与されるたびに課税していたのでは手間がかかるため、110万円までは税金をかけないという制度で、仮に1,000万円贈与したいとすれば1年110万円ですから10年は必要となり毎年やり続けて定期贈与とみなされた場合最終的に総額の税金がかかる場合があることもあります。

本来相続税の税金対策として利用することは認められておらず、毎年贈与を繰り返すと最初から1,000万円の贈与意思があったとみなされるので、毎年この制度を繰り返し使う場合は注意が必要です。

また、30歳未満の子どもや孫の教育資金のために贈与した分は、贈与税が安くなります。祖父母などの直系尊属からの贈与の場合、1,500万円までの贈与税が非課税になります。

さらに20歳以上50歳未満の子どもや孫に対し、結婚・引越・出産費用の贈与に関しては、1,000万円まで税金がかかりません。

贈与税を非課税にするためには、贈与者が金融機関で手続きをする必要があります。銀行で非課税申告書を提出し、銀行経由で納税地の所轄税務署長に提出してもらいます。

この金額を引き出すためには、教育資金や結婚資金等を証明する書類を銀行に提出しなければなりません。

生前贈与は節税対策に利用しようとする場合、基本は1当たり年間110万円までしかできません。そのため人数が多ければ多いほど節税対策として利用できます。

ただし贈与税はもともと相続税の課税回避を予防する意味がありますから、多額の贈与を希望し10年・20年と続けば定期贈与となり、結果的に総額の贈与税がかかってしまいます。

もし、一定額以上の贈与を希望しているなら、贈与税がかからない教育資金などの贈与を利用する方法もありますから、税金対策を考えているならこれらの方法も検討してみましょう。

まとめ

生前贈与にかかる税金は贈与税、不動産取得税、登録免許税があります。また、贈与税の課税方法は暦年課税、相続時精算課税の2つから選ぶことができます。

暦年課税を選び贈与税がかからない1年当たり110万円ずつ贈与する場合、定期贈与とみなされることがあるので注意が必要です。

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