定期的に安定した収入を得られるとして人気の不動産投資ですが賃貸経営だけでなく売却も投資戦略の1つです。
物件は毎年老朽化、入居率の低下により価値が下がります。投資家としてはまだ売却額が購入額と期間中の利益を足した額を上回るころに、売却益(キャピタルゲイン)を得ることもいずれは考えていくべきです。そして売却益で新しい物件を購入して・・・などの戦略を立てることもできます。不動産投資の出口、一棟アパート売却において最適なタイミングとはどのようなものでしょうか。
目次
不動産投資アパートを売却する前に考えておくべきこと
・稼働率はどうか
買い手も投資目的である以上空室率の高い物件は敬遠されます。理想的には満室であるべきでありますが、稼働率が高ければ問題ありません。
・瑕疵はないか
売ってからトラブルになるケースが多いため隠さず伝えるか、できるなら修繕しておきましょう。雨漏りはないか、構造耐久上問題はないか、基礎・柱・梁・壁などに問題はないか、外壁が汚損していないかの目に見えるものからエレベーターの点検は法定通りされているかまで契約不適合責任に含まれる事象は多くあります。もちろん売却を考えていなくても定期的に物件の状況は確認しておくべきです。費用がかかるからといって放置しているとベランダ崩壊、エレベーター事故が起きたりしたときに責任を負うことになのはオーナー自身です。
・そのアパートは自分も買いたいと感じるか
売却を考え始めるころにはある程度経験を積んだベテランになっているはずです。自分自身の目から見て『この値段じゃ割に合わない』と思う物件は他人から見ても魅力が薄い状態といえます。次の買い手も同じ不動産投資家であると考えたときに、買ってもらえるように、『今までの実績からこれからも利益を獲得できる可能性が高い物件である』ことをアピールする必要があります。
不動産投資における売却益(キャピタルゲイン)とは
売却益(キャピタルゲイン)とは保有している資産の価値が高まることで売却時に購入額を上回る収益のことです。不動産投資においては激しい価値の下落が少ないので地価や物件の状態変化に注意していくことになります。特に物件の状態においては適切な管理、運営をしておくことで購入時の状態を維持し、入居率を高めておくことで価値の下落を少しでも防ぐことができます。
例えば単純な計算ですが8000万円で購入した中古アパートで売却時までに経費を差し引いてインカムを得たとします。この差額は3000万円なので4000万円で売ることができれば1000万円の売却益を得たと考えられます。
一方で保有資産から安定した収入を得ることを運用益(インカムゲイン)と呼びます。つまり不動産投資とは運用益と売却益両方を得られる投資といえます。
不動産投資の売却までの流れ
1.価格査定
まず所有物件の価値を調べます。投資不動産を専門に取り扱っている不動産会社に依頼するのが一般的です。納得ができればその不動産会社で媒介契約を結びます。
2.媒介契約
複数の不動産会社に仲介を依頼することができる一般媒介契約、1社のみに依頼する専任媒介契約、専任媒介契約よりも成約がある専属専任媒介契約の3つがあります。
3.売却活動
不動産会社が販促活動をします。一般媒介契約ですと一見広く募集できそうですが。他社に決められてしまう恐れがある為、率先して販売活動をしてもらえない可能性が高く専任媒介契約のほうが窓口が一つになり集中して活動しやすいため優先的に販売してくれる可能性が高いといえます。
4.重要事項説明
宅地建物取引業法で定められている重要事項説明を受けます。瑕疵担保責任や都市計画制限、私道負担、付近の建築予定物件の情報、ローン特約などの説明を改めて受けることで購入意思の最終確認になる大切なものです。
5.売買契約締結
売買契約書を交わします。登記簿に基づいて契約書に売却物件の表示に誤りがないかを確認、売買代金や手付金等の金額と買い主の支払日を確認(手付が解約手付なら手付解除がいつまで可能であるか確認)、土地の実測及び土地代金の清算、
所有権の移転と引き渡しの時期を確認、付帯設備等の引き継ぎ、売却物件を完全な所有権で引き渡せるかを確認、固定資産税や都市計画税といった公租公課等の精算(売り主と買い主の間で精算することが一般的です)などが主な契約内容です。
6.手続き、引き渡し
所有権移転と引き渡しは代金の支払いと引き換えに行われその際に所有権移転登記に必要な書類を買い主に引き渡します。
7.確定申告
確定申告は当該年の1月1日から12月31日の営業活動日が対象となり費用や利益、減価償却等を翌年の3月31日までに税務署に申請します。
【不動産投資】売却をするうえで押さえておきたい減価償却について
不動産投資の場合、物件購入価格を一括で経費として計上することはできず一度購入すると長く保有するもののため、資産価値が長く持続するとされます。不動産購入費を経費として計上するときは築年数を経るごとに価値が低下していくという考え方により、物件の構造に応じて定められた耐用年数から減価償却費を計算します。ちなみに土地は劣化が起こらないとして減価償却には含まれません。減価償却の知識は物件の価格設定だけでなく売却後の確定申告でも節税のために必要(減価償却費を費用に計上しないと所得が大きくなり課税額が増える)です。
【減価償却費の計算式】
減価償却費=建物購入代金×0.9 ×償却率×経過年数
・建物価格の計算式
建物価格=購入額×(建物の固定資産税評価額÷物件の固定資産税評価額)
・償却率
減価償却資産の償却率表|国税庁
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/shotoku/shinkoku/070412/pdf/3.pdf
取得日が平成19年4月1日以降か、平成19年3月31日以前かで表の見る箇所と償却率が異なることに注意してください。
参考:建物の耐用年数
構造・用途:木造・合成樹脂造のもの/細目:店舗用・住宅用/耐用年数:22年
構造・用途:木骨モルタル造のもの/細目:店舗用・住宅用のもの/耐用年数:20年
構造・用途:鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄筋コンクリート造のもの/細目:住宅用のもの/耐用年数:47年
構造・用途:れんが造、石造、ブロック造のもの/細目:店舗用、住宅用、飲食店用のもの/耐用年数:38年
構造・用途:金属造のもの/細目:店舗用、住宅用のもの(4mmを超えるもの) /耐用年数:34年
構造・用途:金属造のもの/細目:店舗用、住宅用のもの(3mmを超え4mm以下のもの) /耐用年数:27年
構造・用途:金属造のもの/細目:店舗用、住宅用のもの(3mm以下のもの) /耐用年数:19年
減価償却はもちろん買い手にもメリットがあります。法定耐用年数を過ぎると売り手にとって減価償却はできなくなりますが売却すると買い手にとって法定耐用年数×20%で減価償却ができるようになります。木造の場合、法定耐用年数22年なので4年の減価償却となるので買い手にとっても節税効果があり、築年数が経っていても魅力的です。また法定耐用年数未満の場合は(耐用年数-経過年数)+経過年数×20%が耐用年数となり、いずれにしても買い手にとって節税効果があります。
不動産投資用アパート売却の適切なタイミングはいつ?
購入価格と経費を抜いた利益より売却価格が確実に上回りそうだとわかった場合こそが適切なタイミングといえます。
ではどのようなタイミングがもっともよいのでしょうか。以下がそのポイントになります。
・満室であるときがベストです
・何らかの事象で地価が上昇したとき(公示地価や基準地価を定期的に確認しましょう)
・減価償却費の適用時期が過ぎたとき(必要経費として計上できなくなるので節税効果が薄れる)
不動産投資用アパート売却にかかる費用はどんなものがある?
売却額から諸経費を除いた分が収益ですが諸経費とはどのようなものでしょうか。
・仲介手数料
不動産会社への手数料として以下が上限です。不動産会社によってこの範囲内で契約をします。
物件価格200万円以下の場合、手数料上限が取引額の5%以内
物件価格201万円以上、400万円以下の場合、手数料上限が取引額の4%以内
物件価格401万円以下の場合、手数料上限が取引額の4%以内
※400万円を超えた場合、一律で『物件金額×3%+6万円+消費税』
・司法書士報酬
司法書士に登記手続きを依頼した場合にかかる費用で司法書士報酬の他、登録免許税、事前調査費用、事後謄本の取得費用も含まれます。多く場合100,000円~150,000円程度が相場です。
・測量費用
買い手より境界確認書を求められるため多くの場合必要になる作業で土地境界確定測量といいます。具体的には売却予定の土地と面した他の土地との境界を調査、確認後確定して測量図にするための費用となります。40万円前後が相場ですが市有地、国有地に面している場合官民立ち合いの必要があり70万円ほどまで上がる場合もあります
また、公簿売買で行う場合(土地登記簿に記載)の場合はこの作業は不要になります。
・収入印紙税
課税の対象になる文書を作成した場合納税義務が生じます。そのため売買契約書作成にも収入印紙代金がかかります。収入印紙代金は売買契約費用に応じて変わります。※1つの課税文書を二人以上が共同作成した場合は、連帯で作成した文書に対して納税義務を負うことになります。
500万円超1,000万円以下の場合、10,000円 ※軽減措置の場合5,000円
1,000万円超5,000万円以下の場合、15,000円 ※軽減措置の場合10,000円
5,000万円超1億円以下の場合、45,000円 ※軽減措置の場合30,000円
1億円超5億円以下の場合、80,000円 ※軽減措置の場合60,000円
※平成32年3月31日までに作成される印紙税は軽減措置による引き下げがありました。
・印鑑証明書交付費用
自治体により異なり、東京都港区の場合は1通あたりの手数料は300円です。
・抵当権の抹消
抵当権の抹消登記には登録免許税と司法書士報酬+金融機関の書類が必要です。ローン支払いの担保として抵当権がかけられていると移転登記をしたとしても競売にかけられてしまう場合があるため抹消登記をしておきましょう。
・税金関連
不動産譲渡所得税、住民税
売却で利益が出た際は譲渡所得の申告が必要で譲渡所得に課税されます。売却額と今までの費用を差し引いた差額がプラスなら利益とみなされ所得に計上されます。譲渡所得は「所得税」と「住民税」に課税され所有期間によって課税率が変化します。
計算式:
譲渡所得=売却金額-(購入金額+購入費用+売却費用)
所有期間の課税率:
所有期間5年以上の場合所得税15%、住民税5%
所有期間5年以下の場合所得税30%、住民税9%
自分でもできますが必要書類が多く大変なので税理士に依頼する場合、譲渡所得金額によりますが10万~数十万円ほどかかります。
【不動産投資】売却時に控除や特例がある
売却で利益が出た場合は税金がかかりますが損失となった場合は控除されます。また、不動産買い替えをする場合は負担軽減として特定事業用資産の買い替え特例も利用できるので譲渡所得にかかる税金を80%まで先送りにできます。これを利用して減価償却が終わった物件を売り、新しく減価償却がつかえる物件に乗り換えるなどの戦略がとれるようになります。
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まとめ
このように売却には今売れる時期かどうか極めや様々な手順を知ること、かかってくる税金の知識をもってなるべく損をしないように立ち回るテクニックが必要です。初めてではなかなかで難しいので専門家の助けを借りていくことが成功のポイントです。
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