安定した収益を得られる不動産投資は公務員にも人気です。しかも公務員の場合、社会的に安定しているため属性が高く銀行からの融資も受けやすく、不動産投資を始めやすいといえます。しかし憲法第15条2項によって「公務員はすべて国全体の奉仕者であって一部の奉仕者ではない」と規定されているため、本来であれば公務員は副業が禁止されています。今回は公務員が不動産投資をする場合、副業規定に違反しないポイントについてご説明いたします。
目次
副業が禁止されている理由と国家公務員法・地方公務員法による規定
公務員による副業が禁止されている理由は『信用失墜行為の禁止・守秘義務・職務専念の義務』という3つの原則が法律で決められているためです。公務員は営利団体に所属して営利活動に関する行為をしてはいけないが、内閣総理大臣及びその職員の所轄庁の長の許可があれば例外であるとされています。
以下、国家公務員の場合該当する国家公務員法103条・104条、地方公務員法の場合該当する38条の規定です。
・国家公務員法第103条 私企業からの隔離
職員は、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下営利企業という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、又は自ら営利企業を営んではならない。
国家公務員法
・国家公務員法第104条 他の事業又は事務の関与制限
職員が報酬を得て、営利企業以外の事業の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、その他いかなる事業に従事し、若しくは事務を行うにも、内閣総理大臣及びその職員の所轄庁の長の許可を要する。
国家公務員法
・地方公務員法第38条 営利企業等の従事制限
第38条 職員は、任命権者の許可を受けなければ、営利を目的とする私企業を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則(人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の規則)で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利を目的とする私企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない
地方公務員法
公務員に不動産投資が認められる範囲
認められる範囲としては5棟10室未満かつ、年間家賃収入が500万円以下、物件が賃貸以外の用途で建てられたものではないこと、です。人事院(国家公務員の人事管理)によると公務員が違反せずに不動産投資を行うには一定の基準があるとされており、その基準の中でなら副業規定に抵触しないとされています。これを超える場合は所轄庁の長の許可を得る必要があります。
超えると副業規定に抵触する一定の基準
(1)不動産の賃貸が次のいずれかに該当する場合
人事院規則14―8(営利企業の役員等との兼業)の運用について
イ 独立家屋の賃貸については、独立家屋の数が5棟以上であること。
ロ 独立家屋以外の建物の賃貸については、貸与することができる独立的に区画された一の部分の数が10室以上であること。
ハ 土地の賃貸については、賃貸契約の件数が10件以上であること。
ニ 賃貸に係る不動産が劇場、映画館、ゴルフ練習場等の娯楽集会、遊技等のための設備を設けたものであること。
ホ 賃貸に係る建物が旅館、ホテル等特定の業務の用に供するものであること。
(2)駐車場の賃貸が次のいずれかに該当する場合
イ 建築物である駐車場又は機械設備を設けた駐車場であること。
ロ 駐車台数が10台以上であること。
公務員が不動産投資をするうえで注意すべきポイント
人事院規則には
“入居者の募集や賃貸料の集金、不動産の維持管理等の管理業務を事業者に委ねることなどにより、職務遂行に支障が生じないようにすること”
とあります。つまり職務遂行に支障をきたさない範囲内でおこなうように、という観点があるため不動産管理を自らがおこなうことで本業に支障をきたすとみなされます。不動産管理における業務は不動産会社に委託する方が安全です。
また以下のように人事院規則には年間の家賃収入上限は「500万円」という基準もあります。
“(3)不動産又は駐車場の賃貸に係る賃貸料収入の額(これらを併せて行つている場合には、これらの賃貸に係る賃貸料収入の額の合計額)が年額500万円以上である場合”
本人名義で行う場合はこれを超えると別途許可を得る必要がでてきますが家族や法人名義であればその限りではありません。妻を法人代表にしてその名義で運用する場合もちろん公務員法には抵触しません。しかし家族の所得が増えることになるため所得税、住民税が増えることになり、税金の試算をしたうえでどうしたら得か、試算して対応していくことになります。
許可を得る場合、許可が得られやすい場合
一定の基準を超えて不動産投資をおこないたい場合、所属している部署の所属長に報告し省庁・役所から許可を得ることが必要であり、以下の書類を用意し提出することになります。
- 自営兼業承認申請書(不動産等賃貸関係)※参考:人事院 自営兼業承認申請書(不動産等賃貸関係)
- 不動産管理の委託契約書
- 物件概要書
- 貸借条件一覧表(レントロール)
など。
また、得た不動産が親の相続によるものの場合、公務員であっても認められやすいといえます。
まとめ
公務員は信用失墜行為の禁止、守秘義務、職務専念の義務といった3原則があるため基本的に副業は禁止です。万が一違反した場合は免職、停職、減給、戒告などの懲戒処分を受けることになります。ですが一定の範囲内であれば不動産投資をすることが可能なので注意すべきポイントをよく知って正しく不動産投資を行いましょう。
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